膵がんは、初期には無症状のことが多く早期に発見することが非常に難しい疾患です。しかし、根治を目指すには早期発見・早期治療が必要で、腹部超音波検査(腹部エコー)や造影CT、MRI、超音波内視鏡検査が診断に有用です。
当院では腹部超音波検査(腹部エコー)を毎日施行しており、必ず医師が検査を行います。検査技師でも腹部超音波の施行は可能ですが、自身の目で確認をしたいため消化器病専門医である2名の常勤医師と、非常勤医師が担当させていただきます。
膵臓は上腹部の背中側、胃の裏側に位置した15㎝ほどの細長い臓器です。
膵臓には2つの働きがあり、膵液を分泌し食物の消化を促す働きと、インスリンなどのホルモンを分泌し体のバランスを保つ働きです。
2022年の部位別がんの死亡者数で膵がんは第4位となっております。15年前は膵がんの死亡者数は、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんにつぐ第5位で、年間2万人が膵がんでなくなっておりました。近年わが国では高齢化に伴い死亡者数は年々増加し現在は年間3万人以上の方が膵がんで亡くなっており、この30年で約4倍に増加しております。
また、膵がんにかかった方の数(罹患者数)と、膵がんで亡くなった方の数(死亡者数)がほぼ同数であり、難治性のがんの代表と言われております。
初期症状としては「何となく胃の具合が悪い」など、あまりはっきりしない腹部症状が多く認められます。その他に多いものとして、みぞおちや背中の痛み、黄疸、慢性的な下痢、血糖値の悪化(糖尿病の悪化)の4つが挙げられますが、3割の方は無症状です。
膵がんなどの膵臓疾患の家族歴、糖尿病、慢性膵炎、肥満症、喫煙、大量の飲酒、膵嚢胞などが挙げられます。
まずは問診と腹部の診察をします。必要に応じて血液検査を施行し、腹部超音波(腹部エコー)を併用します。当院での腹部超音波は検査技師施行でなく、必ず消化器病専門医が施行させていただきます。また最近では自費診療ではありますが、膵がんのリスクを確認する為に唾液による検査も行っております。当院ではサリバチェッカーを導入しておりますので、ご興味がある方はホームページにてご確認をお願いいたします。
もし、腹部エコーで正常範囲でなければ造影CTやMRI検査を追加し、腫瘍が疑われた際は、超音波内視鏡検査などを検討します。
もし手術可能な早期の膵がんを発見できた場合には外科的な切除(根治手術)を行います。しかし、70-80%が手術不可能な状態で発見される為、その場合は抗がん剤などの化学療法や放射線療法による治療を行います。最近では多くの抗がん剤が開発されており、色々な薬剤の組み合わせが可能です。発見時には切除不可能であった膵がんも化学療法でがんを小さくして手術が可能となった方もいらっしゃいます。その他、高圧の電流を流してがん細胞を殺す不可逆電気穿孔法や、超音波の熱でがん細胞を焼いてしまう強力集束超音波焼却療法(HIFU)など新しい治療方法も開発されてきております。
膵がんは進行が速く、症状が出た時にはほとんどが手術治療のできない状態で発見されます。また、膵がんはどんなに小さくても転移する可能性があるため、早期がんという概念がありません。根治治療を目指すには何とか10mm以下の状態で発見することが重要とされており、その診断に有効な検査は超音波内視鏡検査とされております。CTやMRIで見つけにくい10mm程度の腫瘍も発見でき組織を採取して病理診断をすることも可能です。
当院で超音波内視鏡検査が必要と判断した患者様は、自治医大病院、赤十字病院、さいたま市民医療センター、埼玉県立がんセンターなどにご紹介いたします。また東京医科大学消化器内科の糸井隆夫先生は、すい臓がんや胆管がんの御専門で様々な検査法や治療法を確立されており、当院からも多くの患者様をご紹介させていただいております。
とはいえすい臓がんは診断の前にまずは疑うことが大切であり、通常の保険診療以外にも、自費診療となりますが腫瘍マーカーや、唾液を用いたサリバチェッカーなどの併用もその一助となります。当院でも上記検査を施行しておりますので、検査にご希望のある方は一度ご相談下さい。
のなか内科 野中 雅也
のなか内科は、埼玉県さいたま市大宮区(旧大宮市)に野中医院として開院し、野中病院を経て今年で79年目となります。今後もさいたま市や大宮区の地域医療を担っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
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