小腸や大腸に腫瘍や炎症などの病変を認めないにもかかわらず、繰り返す腹痛や腹部の不快感を症状とし、便秘や下痢などの便通異常を伴う疾患を過敏性腸症候群といいます。
過敏性腸症候群の診断に大腸内視鏡は必須の検査ではありません。しかし、下痢や便秘の原因となる、その他の疾患を除外することは重要であり、そのためには大腸内視鏡が有用と考えられています。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患や、アレルギーが原因と考えられる好酸球性胃腸炎、薬剤起因性の腸炎、寄生虫などを否定するためには大腸内視鏡や糞便検査を行う必要があります。また甲状腺ホルモンや血糖の異常で消化管の蠕動異常が起こることがあるため、必要に応じて採血や尿検査を行います。
過敏性腸症候群の診断には年齢や自覚症状、基礎疾患に応じて必要な検査を検討することも重要なのです。
当院では大腸カメラを2023年度860件、2022年度819件を行い全て内視鏡指導医・専門医である常勤医師が実施しております。苦痛がないように丁寧にゆっくりと実施しておりますが、それでも不安感が強い方は麻酔を用いて眠りながらの検査もございますので、お腹の症状にお悩みの方はお気軽にご相談下さい。
心理的ストレスおよび内臓の知覚過敏による相互作用と考えられていました。しかし最近では、一部に急性胃腸炎後に発症する過敏性腸症候群が存在する事がわかってきており、急性胃腸炎の治療やその後の経過観察も発症予防のために重要と考えられております。
便秘が主体の便秘型、下痢が主体の下痢型、両者が混在する混合型があります。
腹痛は、排便により軽快することがある事も特徴です。便通異常以外にはお腹が張る、お腹が鳴る、ガスが多いなどの腹部症状があります。その他全身症状として、動悸、不安、不眠、頭痛、発汗、頻尿などを伴うこともあります。一般に食欲低下や体重減少は少ないとされていますが、お腹が痛くなるために食べないようにしているとおっしゃる患者様が比較的多くいらっしゃいます。
過敏性腸症候群の診断基準としてRomeⅣ基準があります。皆様も受診したときに医師から腹痛や排便状況、期間などを問診されたと思いますが、医師はこの診断基準に当てはめながら問診をとり過敏性腸症候群の可能性を検討します。機能性疾患(消化機能の異常)であり器質的疾患(癌や潰瘍などの病変)でないため、大腸カメラでは基本的に異常を認めません。ただしウイルス性腸炎や細菌性腸炎、性行為感染症による腸炎、また潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患とも症状が似ており、それぞれ治療が異なるため鑑別が重要です。
生活習慣の改善
不規則な食生活やアルコール多飲、睡眠不足などの生活習慣の乱れが一因として疑われれば、まずは生活指導から検討します。
食事療法
ある特定の食物で症状が悪化することがあり、食物を特定し避けることも重要です。当院では食物アレルギー検査も併用しております。
薬物療法
消化管運動調整薬、抗コリン薬、整腸剤、抗不安薬などを症状やその他治療中の疾患により用います。
当院の外来診療でも、慢性的な腹痛や下痢などの過敏性腸症候群が疑われる方が増えております。ある報告では健康な方の約10%がこの疾患であるとする報告もあります。多くの方が仕事や職場の対人関係によるストレス、受験勉強や登校のストレスを抱えているようです。また、転居や転職で新たな環境に慣れない方、大切なご家族やペットとの死別などが原因と考えられる方もいらっしゃいます。また食生活や飲酒、睡眠不足などの生活習慣に少なからず問題がある方もいらっしゃいます。当院では生活指導の相談から内服加療を継続し半年以上軽快しない場合は、心療内科への連携も検討する事があります。この疾患は症状の改善や軽快と再燃を繰り返すことや、なかなか症状が落ち着かない方も少なくありません。そのような方は転医を繰り返す事も多いため、コミュニケーションが重要と考えております。もし、気になる症状がございましたらお気軽にご相談ください。
のなか内科は、埼玉県さいたま市大宮区(旧大宮市)に野中医院として開院し、野中病院を経て今年で79年目となります。今後もさいたま市や大宮区の地域医療を担っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
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