痛風は一昔前には「ぜいたく病」と言われていましたが、飽食の現代社会ではありふれた疾患になっております。痛風の原因である高尿酸血症は、採血での血清尿酸値が7.0㎎/dlを超えるものをいい、痛風発作や尿管結石、腎機能障害や心筋梗塞や脳卒中などの原因となります。近年では健康意識の高まりから健康診断や人間ドックを受診する方が増えるとともに多くの方が高尿酸血症を指摘されています。当院の健康診断や人間ドックでも、多くの尿酸値が高い方がいらっしゃいますが、症状がないため残念ながら放置してしまっている方も少なくありません。
2021/5/25追記
現在、痛風や尿管結石の患者様の受診が増えております。湿度が上がってきているものの、水分摂取が足りていない影響が考えられます。特に高尿酸血症の治療を中断されている方や、ジョギング、ゴルフなどの運動を定期的に行っている方は、こまめな水分摂取をお願いいたします。痛風発作の前兆を感じられる方は早目の受診をご検討ください。
圧倒的に男性に多く認められます。高尿酸血症の頻度は成人男性の約20%、30歳代男性では30%に達していると推定されており、30歳以上の男性では痛風の有病率は1%を超えるとされております。
また、女性では閉経後に尿酸値は上昇しますが、それでも高尿酸血症の頻度は全年齢を通し5%未満です。
体内で尿酸が作られすぎたり、不要となった尿酸がうまく体外に排泄されなくなることで高尿酸血症となります。家族性などの遺伝的素因と、過食や運動不足による肥満症、アルコール摂取過多、ストレスなどが原因となります。また、薬剤の副作用による高尿酸血症もあります。
採血による血清尿酸値が7.0㎎/dl以上を高尿酸血症とします。
当院でも採血結果は翌日に確認できますので、今までに高尿酸血症の指摘された方や痛風発作、尿管結石を起こした事がある方はお気軽にご相談ください。
痛風発作の治療
まずは痛みを抑える治療を行い痛風発作が治まってから、尿酸値を下げる治療を開始します。発作中はなるべく尿酸値を変動させないことが原則で、急激に尿酸値を下げると痛風発作となってしまいます尿酸値は3-6か月かけて徐々に下げていき維持量を決定し、発作後の尿酸の目標値は6.0㎎/dl以下です。
高尿酸血症の治療
尿酸値が7.0㎎/dl以上だからといってすぐに薬の治療が必要ではりません。まずは生活習慣の見直しから開始して定期的に尿酸値を経過観察していきます。
ただし次の方は、薬による治療の検討が必要になるためご相談ください。
・痛風発作を起こしたことがある方。痛風結節がある方。
・尿酸値が8.0㎎/dl以上で、かつ次の合併症をお持ちの方。
尿管結石、腎機能障害、高血圧症、心筋梗塞、狭心症、糖尿病、メタボリックシンドロームなど。
・上記にあてはまらずに尿酸値が9.0㎎/dl以上の方。
飽食の現代社会では健診や人間ドックの受診率増加により高尿酸血症を指摘される方が増えております。尿酸の元として食品に含まれるプリン体が有名ですが、食品のプリン体から作られる尿酸は20%程度で残りの80%は体からの老廃物です。したがって普段からの食生活などの生活習慣が高尿酸や痛風発作の予防に大変重要です。
高尿酸血症は、高血圧や糖尿病、高脂血症や慢性腎臓病を合併しやすいことがわかってきております。これらを合併すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中を起こしたり、腎障害が進み透析が必要となることもあります。痛風発作はこれらの合併症の初期症状であり、水面下で心筋梗塞や狭心症、脳卒中や腎障害などの重大な合併症が隠れている可能性に注意する必要があります。したがって、尿酸値が過度に高くなくとも痛風発作を起こした方は内服治療の検討が必要です。
まずは生活習慣の改善を普段から心掛けてください。適正カロリー摂取を目標としプリン体の摂りすぎに注意してください。海藻や野菜、牛乳などのアルカリ製品を積極的に摂取し、1日2リットル以上の水分を摂るように心がけてください。アルコールはプリン体が多いため、1日1合以下を目標としてください。またウォーキングや水泳などの有酸素運動を継続して行うことも重要です。無酸素運動や筋力トレーニングは尿酸を上昇させてしまうため注意が必要です。
高尿酸血症は、仕事を積極的にバリバリこなし、早食い大食いでストレスを感じやすい方に比較的多く認められる現代病のひとつです。十分な睡眠や適度な有酸素運動、時間をかけた食事など、自分なりのストレス解消法を見つけていただき、それでも上記の治療に当てはまる方は当院に一度ご相談ください。
のなか内科 院長 野中 雅也
のなか内科は、埼玉県さいたま市大宮区(旧大宮市)に野中医院として開院し、野中病院を経て今年で78年目となります。今後もさいたま市や大宮区の地域医療を担っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
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